動画制作をする上で、どのように撮ればいいか悩まれたことはありませんか?
なんとなく動画のイメージを頭に思い浮かべて撮ってみても、完成したものを見るとなんか違う。と感じたことはありませんか?
それは動画を作る為の設計図がないからかもしれません。動画制作には「設計図」が必要です。
また、動画制作の依頼を受けて、クライアントに意図したイメージを伝えれなかったり、スタッフと動画を作るときに完成したイメージが伝わらずに、撮影に時間がかかったり、編集しだしてからなんども撮影をやり直したりということがあるかもしれません。
誰もがスマホだけで簡単に動画が出来てしまうからこそ、きちんと『どんな動画を作る』のかを考えること、そして『どんな動画を作る』のかを共有することが大切です。
絵コンテ とは?
絵コンテ (えコンテ、英: storyboard)は、漫画、映画、アニメ、テレビドラマ、CM、ミュージックビデオなどの映像作品の撮影前に用意されるイラストによる表。映像のイメージを具現化するための設計図にあたるものである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/絵コンテ
画コンテ (えコンテ)と表記されることもある。単にコンテ とも呼ぶ。漫画の場合はネーム、イラストではなく文章による場合は字コンテ (じコンテ)、動画によるものをビデオコンテ と呼ぶ。
「コンテ」は、英語のコンティニュイティ (continuity、”継続”や”連続”という意味) の略である。
動画制作には絵コンテを描くという行程があります。絵コンテはいわば動画の設計図のようなもので、1つのカット(画面)がどのようなものかを説明するものです。
ですので画面という言葉から画コンテ と書くこともあります。
一つのカット(画面)で伝えることは「被写体はどのようなサイズ、構図になるか」「被写体はどのような動きをするのか」「カメラのどの部分から画面に入ったり出たりするのか」「カメラ自体はどのような動きをするのか、固定(フィックス)なのか」「どのくらいの時間映しているのか(尺)」などを伝えます。
絵コンテを読めば、上から順番に映像の流れ(時間の流れ)が把握できるようになっています。
- ページナンバー・カットナンバー・画面(カットの内容を絵で表現したもの)
- 内容(カットの内容を文字で説明したもの。キャラの動きやカメラワークなどを書きます)
- セリフや効果音・時間(何秒間の演技なのかなど)
監督がすべてのスタッフに自分が思い描いているイメージを伝えるために必要な設計図なので、効率的な組織運営をするならばきちんと描いておく必要があります。
また、動画制作者、監督の自分自身が動画が、どの様なものに仕上がるかを整理して客観的に見つめ直すのにも大切な行程です。
案外自分のイメージというのは固まっていなかったりすることがあるので、動画を作る前には必ず行いましょう。
絵コンテはどのような流れで動画を制作していくのか、整理するためにも使われます。
そして、絵コンテを書くのは監督だけでなく、演出家や絵コンテを専門に書き上げるスタッフ、アニメーターなどもいます。しかし、動画を『作る』のであれば、きちんと描けた方がいいでしょう。
絵コンテの見方

- Title(タイトル) 作品タイトルなどを記入します。
- Part(パート) scene(シーン) Aパート、Bパートやシーンナンバーなどを記入します。
- No. 絵コンテ用紙のページ番号。全体の◯/◯ページと記入します。
- CUT(カット)カットナンバー。
- DIALOGUE(音声)登場人物の台詞など音声関係を記入します。(on)は画面内にいる人物の台詞、(off)は画面外にいる人物の台詞、(SE)は効果音、ノンモンは無音。
- PICTURE(画面)カット内の絵の内容。被写体の動きやカメラフレームの移動も矢印で指示しておきます。
- ACTION(内容・動き)絵の内容を文字で表している欄。編集なども指示してある。「ト書き」ともいう。
- TIME(時間・尺)カットの秒数。1秒以下はフレーム数で表される。1+12ならば1秒と12フレーム(1秒=30フレーム)の意味。
- Date(日付)記入した日付など
- Total(時間+フレーム)合計タイム。ページ毎のカットの秒数合計、下部は全ページのカットの秒数合計。
この絵コンテ用紙は一例です。動画つくーるで制作する、もしくは私自身が制作する動画で絵コンテを手書きで描くときに使います。
中央に⑥PICTUREを配置しているのは、エヴァンゲリオンで有名なアニメーション制作会社GAINAX、カラー(khara, inc.)で使われている絵コンテを参考にしています。
絵コンテ描き方、使い方
決まったフォーマットがあるわけではなく、上記の内容が描かれていれば問題ありません。またカットが上から順番に書かれていること、1カット1升のコマは使う事(被写体、カメラの動作が多い場合は分けることもある)カットナンバーと1カットあたりの尺(時間)が描かれてていればいいので、専用の原稿用紙のようなものを必ず使う必要もありません。
しかし、絵コンテは単にスタッフやクライアントに動画のプランを共有するためのものだけではありません。監督がプランニングするのにもとても役立つツールです。
描く準備、必要な道具
プランニングする、動画の演出を考えるのに必要ですので、とにかく大量に描く必要があります。何度も修正したり、メモを加えたり、思い浮かんだアイデアを手を止めずにどんどん描くためには、紙、筆記用具、ストップウォッチなどが必要です。
●紙 絵コンテ用紙
絵コンテ用紙は、お店でも買えますがパソコンでダウンロードして印刷して使用してもいいです。
どんどん描き続けるためにも、大量に絵コンテ用紙を用意しておいた方がいいでしょう。
思い浮かんだアイデアは簡単に消えていきます。消える前に紙に書き留めておきましょう。
●筆記用具 鉛筆、シャープペンシル
鉛筆やシャープペンシルをお勧めしているのは、修正が容易だからです。
プランニングの際に何度も修正したりちょっとしたアイデアをメモ書きすることもあるからです。
最終的なクライアントへの提出や、スタッフとの共有には必要はないかも知れませんが、監督、演出家がプランを練る際には、鉛筆やシャープペンシルをお勧めしています。
●ストップウォッチ
案外疎かにされがちですが、ストップウォッチはとても大事です。演技やセリフ、音楽の入り、カメラの動きなどのタイミングを計るために使用だからです。
動画の演出で大切なのはタイミングです。時間はどんどん流れていって動画のイメージは観客の記憶にはぼんやりとしか残りません。
その上、映画やCM、ミュージックビデオ殆どの動画は時間に制約があります。
限られた尺(時間)の中でどのカットにどれだけ印象を残すのか?というバランスや、よりダイナミックに見せる為の時間のコントロールを行います。
また、尺が分からないと、撮影の際のスケジューリングも難しくなってくるでしょう。
絵コンテの事例
絵コンテの事例 をご紹介いたします。
実際に絵コンテを書いて動画を作る動画つくーるのワークショップやセミナーで作られた作品です。
近所のアイスクリーム屋さん
iPhoneセミナーの参加者の作品です。
動画つくーるトライアルショールームの近所にあるアイスクリーム屋さんフルーツモンキーのCMを作ってみよう!と言う企画で書かれた絵コンテです。

動画つくーるの紹介①
企画から撮影、編集、上映会までを一日でとりあえずCMっぽい作品を作ってみようと言う「動画であそぼ!」のワークショップで作った作品です。
動画つくーるの紹介②
企画から撮影、編集、上映会までを一日でとりあえずCMっぽい作品を作ってみようと言う「動画であそぼ!」のワークショップで作った作品です。
動画つくーるの紹介③
企画から撮影、編集、上映会までを一日でとりあえずCMっぽい作品を作ってみようと言う「動画であそぼ!」のワークショップで作った作品です。
絵コンテのデジタル化
動画を設計する上で絵コンテは必ず必要な作業ではあるのですが、この作業を最近は疎かにされている傾向を感じます。
やはりきちんと作って欲しいので絵コンテを描いて欲しいのですが、そもそも手書きで書くというのはとても敷居位が高いですね。
最近ではパソコンでイメージの合う絵を探してきて当て込んで並べるという形で仕上げてしまうことが多いです。
特に予算感の少ない動画制作だと、MicrosoftのWardやExcel、PowerPoint、もしくはAdobeのPhotoshopやIllustratorで描いてしまうことが多いですね。
特にPowerPointは作成したスライドをリストで並べることができるので使われている方も多いのではないでしょうか?
広告系の場合はPhotoshopやIllustratorなどで美しく仕上げている現場も多いですね。
しかし動画の編集をiPhone単体でもできてしまうことから、絵コンテを描かずにすぐ仮の動画イメージを作ることも出来てしまいます。
この場合もうすでに仮の動画が出来てしまっているので、これだけでプレゼンやスタッフ同士での情報共有の為の絵コンテができているとも言えます。
このように仮の映像がコンテになっているビデオコンテというものもあります。
iPad Proで絵コンテを描く
アニメなどは勿論絵コンテは手描きなのですが、アニメの現場に関わらず手書きで絵コンテのラフを描きたいと言う方も比較的多いと思います。
手描きは思い立った時に、瞬間的に設計できるのが良いですね。しかし今の時代にわざわざ紙で描くというのもとても大変な作業ですので、絵コンテはiPad Proで描くことをお勧めします。
場所もスペースも時間も取らないし、思いついた時にすぐに取り掛かれるのがいいです。
そして共有も簡単ですし、クライアントに見せる為に綺麗に清書するのも素早くできます。
GoodNotes5 絵コンテテンプレート
私は、iOSアプリのGoodNotes5をお勧めします。
GoodNotes5なら、このサイトでダウンロードできるテンプレートも使うことができます。
今、大抵のスタジオではB4サイズやA4サイズのコンテ用紙を使っており、コンテマンが自分に使い易い大きさの用紙を選択して描くのが一般的です。
iPad Proで絵コンテを描く場合、この用紙サイズについては気にしなくても良いのですが、印刷して現場で使う場合を想定して、配布用テンプレートはA4サイズに統一しています。
ビデオコンテ
絵コンテはクライアントやスタッフに完成イメージを伝えたり、監督や演出家がプランニングをする為に使いますが、絵でコンテを切らずに直接プレ映像を作ってしまうことがあります。
編集ソフトがスマホでも扱えるようになったことから、ストックの素材やCGを使って簡単に尺出しができますので、簡易な映像を作ってしまう方が手っ取り早いこともあります。
今後、絵コンテの作成ワークはアプリだけで完結することになるかも知れません。
現在でも、静的な絵コンテのニーズは徐々に低くなり、ビデオコンテ 、アニマティクス 、プリビズ が一般的になりつつあります。
現場で考える時間を減らすことを考えると、予算とスケジュール管理された効率的な作品作りとなるとプリビズ作成による撮影計画と予算組は必ず必要となるでしょう。
- ビデオコンテ は、絵コンテの代わりに動画になっている動画コンテを言います。日本のアニメ業界ではこれを「ビデオコンテ」と呼ぶことが多いです。他にも「Vコン」と言い方もされます。演出の効果を自分自身で客観視して検証する台本として用いています。
- アニマティクス とは、動画制作の初期段階において各シーンや全体の流れを把握しやすいようにまとめられています。海外では一般的に呼ばれます。 昨今ではあらゆる映画でアニマティクスが制作されます。
- プリビズ とはPre Visualizationの略語です。 プレビズとも呼ばれます。 完成した状態を想像できるシミュレーション映像を作成することを意味します。ビデオコンテをCG業界では「プリビズ」と呼ばれます。
専用アプリでビデオコンテを作成する
今後は、絵コンテもデジタル化されていくでしょう。アプリだけで完結することになるかも知れません。
最終的な動画作品を完成するために必要な人物、ロケーション、カメラ、ライトをシミュレーションできて管理可能なソフトをiPadだけで完結できればとても便利です。
現在は、Storyboard Proというソフトがあります。
PC用のソフトになりますがフリーで絵コンテ(ストーリーボード)が描けるソフトともあります¥
仮の絵で動画を作ってしまってビデオコンテにする
ビデオコンテは設計図の次の段階の模型のようなものです。より詳しく制作者同士でイメージを共有する為に役立ちます。アプリを使用しなくても仮の絵や写真などをあてこんで、編集ソフトで作り込んでしまうと言う方法もあります。
この場合は撮影の絵以外はほぼ全て完成しているような状態です。
BGMを入れて文字などを仮で入れて、完成イメージにより近いものを作っておきます。デジタル時代だからできる方法です。
編集ソフトのタイムライン上にはすでに編集データが出来上がっている状態ですので、撮影してきた動画を差し替えるだけで完成する状態に持っていくことができます。
絵コンテ 演出用語解説
カメラワーク用語
● FIX(フィックス)
固定画面のこと。ほとんどの画面はこれ。
●PAN(パン)
カメラの位置を固定したまま画面を左右(または斜め)に振ること。
右PAN、左PANもしくは上手、下手へPANなどと指示する事もある。
● 付けPAN(つけパン)
被写体をつねにフレームの中におさめて被写体の動きに合わせてPANを行うこと。
● TILT(ティルト)
カメラの位置を固定したまま画面を上下(または斜め)に振ること。
T.U(ティルトアップ)やT.D(ティルトダウン)と指示する事もある。
● FOLLOW(フォロー)
カメラが移動しながら、被写体をいつも視野の中に収めて、その動きを追うこと。
● ドーリー
カメラが水平に移動して撮影すること。
● マルチ
マルチプレーンの略で、複数の段を使用した撮影のこと。段のいずれかに焦点を合わしてある。
◆ゴンドラ…カメラ前の段に焦点を合わせたまま段ごとカメラが下段に向かって近づいていく事。
◆密着マルチ…画面全体に焦点があっているマルチ。多重スクロール的な画面が作れる。
● 画面動
画面全体の振動を表現するために、絵全体を上下左右に意図的に動かして撮影すること。
「画面ブレ」も、だいたい同じ。
● 望遠圧縮
遠くの被写体を望遠でとらえると、遠くの距離間が圧縮されて見えること。
● 同ポジ
以前に出たカットと同じ場所(ポジション)。カットを指定している事もある。
● 逆ポジ
実際の画面はコンテ画の左右反対のアングル、つまり裏返しの絵という指定。
● ポン寄り
ある被写体の引きの絵から、次のカットで被写体に寄ること。
● 正面UP
人物の正面のアップ
● 半面UP
人物の横顔のアップ
● アオリ
ふりあおいでとらえること。
● フカン
見おろしてとらえること。
● ナメ
ある被写体ごしに被写体をとらえること。
知っておきたいカメラワーク5種類
演出用語
●in(イン)
被写体が画面舞台の中に入りこんでくること。
● out(アウト)
被写体が画面舞台の外に出て行くこと。
● 上手(かみて)
映画(スタッフ側)では画面の右。
演者はカメラに向かって左
● 下手(しもて)
映画(スタッフ側)では画面の左。
演者はカメラに向かって右。
● 兼(兼用)
以前使った動画素材、背景、レイアウト、原画などを再び使うこと。
編集用語
● F.I(フェードイン)
画面が段々明るくなる効果。
● F.O(フェードアウト)
画面が段々暗くなる効果。
● O.L(オーバーラップ)
画面と画面を重ね合わせる効果。カットのつなぎに使う事が多い。
● DF(ディフュージョンフィルター)
フィルターの一種で、画面をにじませる効果をもっている。
● サブリナ
爆発や光などの効果を高める為、例えば一瞬画面全体を白くさせたりする手法。
● A.C(アクションカット)
カットと次のカットで被写体の動きが連続するとき、その被写体の動きを前後でつなぐ感じに編集する事。
絵コンテから作品の構成を分析する
僕は昔、中学生の頃エヴァンゲリオンの絵コンテで、コンテの切り方を学びました。
当時はエヴァンゲリオンのテレビ再放送でブームが起きていることでしたので書店に並べられていました。
絵コンテには作品の情報が沢山詰め込まれています。
当時は純粋に作品を楽しむ為だけに買って読んでいましたが、一つ一つのカットがとても丁寧に意図が込められていることが伝わりました。
人物の視線の意図や、配置のバランスで関係性を伝えています。
動画は一気に流れてしまう為一つ一つのカットに印象は残りません。
その為動画を設計をする時に丁寧に演出をすることを疎かにしがちですが、
優れた作品は無意識の部分にどう作用するか?をきちんと考えられています。
そういった部分を見つけるのに、有名な作品の絵コンテを読むというのはとても新鮮な経験ができます。
実際に絵コンテを読んでみる
有名なアニメ作品であれば、絵コンテは販売されていますので是非手に取ってみてください。絵コンテを読みながら作品を見るのもとても勉強になりますよ。
バラエティー番組を絵コンテにして分析する
バラエティー番組は絵コンテを描くことはほとんど少ないですが、逆に放送された番組から絵コンテを書くことで、番組の構造を解説した方がいました。
これはとても面白い試みですね。
完成した動画から設計図を作ることで動画がどう作られていくかを観察できます。
映像をたくさん見ることもいいですが、このように絵コンテを一度描いてみるのもいいかも知れません。
動画演出について
絵コンテの書き方が分かっても、演出方法がわからなければそもそも絵コンテは書けません。それはもうひたすら動画を大量に見まくってインプットするしかありません。
しかしそれでも、体系化された演出技法というものは必ずありますので、本などで調べてみるといいでしょう。
この記事の筆者は時折Twitterで動画演出のTweetをしています。#動画学 という形でモーメントにまとめておりますので、ご興味がある方はよんでみるといいかもしれません。
動画学
かっこいいだけで出来てしまった動画は 作ったとは言えないでしょう! 再現性があって初めて 動画を作ったと言えます。───動画演出の知識をまとめた、TarCoon☆CarToonの動画学です。このモーメントが、動画の学術的資料となることを目指して日々ツイートします。ハッシュタグは (#動画学 )をチェック!!
動画演出の知識をまとめた、TarCoon☆CarToonの動画学です。
— TarCoon☆CarToon(たぁくんカートゥーン) (@TKMS_all4A) March 2, 2020
動画を作る上で考えて欲しいことを纏めています。
毎日更新していくのでぜひ読んでください!
⚡️「動画学」(@TKMS_all4Aさんによる: https://t.co/xEwtNa6YvM)